減価償却費とは?節税の基礎「減価償却」の基本知識を解説

節税の基礎知識

今回は減価償却費の基礎知識について解説します。減価償却は事業の経費としては金額が大きい経費の一つですが、ちゃんと理解しておかないと正しい節税効果が得られない支出です。

法人でも個人事業主でも決算期間近や年末になってから「利益が出てしまいそうなので何か経費を使いたい」と考えることが多いと思います。この時に考えるのってだいたい、車を買おうとか、PCが古くなってきたから新しいのにお買い替えようとか、大きな支出を伴うモノの購入を想像しがちですが、これって残念ながら節税としては効果がないことがほとんどです。

理由は、年度末に大きな買い物をしても、その事業年度(個人は年)に一括で費用にすることができないから。事業で何かを購入した場合、必ず減価償却という税務上のルールに従って複数年に分割して経費として計上していく必要があります。

・減価償却費って何?どうして一括で費用にすることができないの?

・具体的な減価償却費の計算方法は?

・節税に有利な備品の買い方は?

・減価償却の基本ルールを無視できる中小法人の特例

私は税理士として100社以上のクライアントに節税を含む資金繰りのアドバイスをしていますが、この節税としては最も基本的な手段である「何かを買う」という部分に関して、ちゃんと知識を持っていない経営者が多いと感じています。

今回は節税の基本中の基本、減価償却費についてしっかりと解説していきますので、年度末に節税対策を検討する上での基礎知識を身に付けていただきたいと思います。

減価償却費とは?10万円以上のモノは資産計上が原則

10万円以上のモノは資産計上が原則

決算前に会社にかなりの利益が出ることが判明して、慌てて経費を使おうとすることってありますよね。

会社や個人が事業で使用するために何かモノを購入した場合、当たり前ですが経費にすることができます。ただしモノの購入の場合、買ったタイミング(厳密には事業用途に使用を始めたタイミング)で全額経費にできるのは、10万円未満のモノだけです。

では10万円以上のモノを買った場合にどうなるかというと、税務上はいったん「資産」として計上され、その時点では経費になりません。その一旦は資産として計上したものを、減価償却という形でその後の複数年に分割して経費にしていくことになります。

10万円以上のモノは資産計上が原則

なぜ一括で経費にできないのかというと、その購入したものは今後継続して使用されると考えられるため、将来にわたって売上を生むための原資になるという考え方に基づきます。その支出に対応する収入が将来に得られるものなのであれば、購入したタイミングで一括に経費にしてしまうのは、費用収益の対応がとれていないと考えるわけです。

耐用年数に応じて複数年で経費化する

では何年間に分割して経費にしていくのかというと、資産はその種類ごとに「耐用年数」というものが税務上に定められており、その年数に従って費用化していきます。


例えば、

耐用年数
  • 普通自動車なら6年
  • パソコンなら4年
  • カメラなら5年

といったように、種類や用途によって細かく規定されています。主な資産の耐用年数は、国税庁が耐用年数表を公表しているので、そちらを参考にしてみてください。

中小企業でよく登場する資産の耐用年数を例としてまとめておきます。

中小企業でよく登場する資産の耐用年数

資産カテゴリ資産名耐用年数
器具備品パソコン4年
器具備品プリンター5年
器具備品カメラ4年
器具備品冷蔵庫6年
器具備品時計10年
器具備品机、いす、キャビネット
 ―金属製のもの
 ―その他のもの
15年
8年
器具備品テレビ5年
車両運搬具普通車5年
車両運搬具自転車2年
建物附属設備電気設備、給排水設備、ガス設備15年

減価償却費の計算方法

計算方法は基本的に定額法と定率法の2種類

耐用年数を確認したら、単純に年数で割って費用化するわけではないので注意が必要です。

資産は「定額法」と「定率法」の二種類の方法のいずれかで減価償却していくことになります。この減価償却方法は、資産の種類によってどちらの方法で計算すべきなのかということが決まっています。

※事前に税務署に届出を出すことで、定率法・定額法のどちらの方法を採用するか資産の種類ごとに選択することができる資産の種類もあります

具体的には「建物、建物附属設備、無形固定資産」カテゴリは定額法、「構築物、車両運搬具、機械装置、工具器具備品」カテゴリは定率法という方法により計算します。

「耐用年数+償却方法」を確認して、一覧表から償却率を確認します。

減価償却費の計算方法

資産の取得価額 × 償却率 × 月数按分 = その年度の減価償却費

となります。

減価償却費の計算の具体例

取得資産:パソコン(350,000円)

法定耐用年数:4年(定率法、償却率:0.625)

12月決算法人が9月に購入(当期に含まれる月数は9~12月の4カ月)

350,000 × 0.625 × 4か月/12ヶ月 =72,916円 ・・・ その年度の減価償却費

上記の例では、35万円の資産を購入したのに、その年度の経費にできるのは7万円程度です。

この場合は9月に購入していたから4か月分の減価償却費の計上ができましたが、例えば決算月ギリギリの12月に購入していた場合には、1ヶ月分しか計上できないため、約1.8万円しか経費にすることができません。

これでは節税対策にはならないですよね。

節税に有利な資産の購入方法

このように、大きな買い物をしても一括で費用化できないことから、期末に資産を購入すること自体は節税効果が低くなりがちということがお分かりいただけたかと思います。

それではどのようにしたら節税効果の高い資産の購入ができるのかを検討しましょう。

できるだけ早めに買う

減価償却費の計上は月数按分なので、当たり前ですが事業年度の初めの方に買った方が経費として計上できる金額が大きくなります。

先ほどのパソコンの例だと、年度末の12月に買った場合には18,229円しか計上できないのに対し、年始の1月に購入したものは218,750円も経費に計上できることになります。

年度末に利益が出そうだからお金を使いたいと考えていることが多いと思いますが、当期の利益予測を早めに進めておくことで、こういった早期からの節税対策ということが可能になりますので、利益の着地点を意識するということは常に考えておきましょう。

中古の資産を購入する

中古の資産は減価償却費の計上で有利に働きますので、可能な場合は積極的に検討しましょう。

特によく言われているのは車ですね。車は購入金額が大きいですが、中古市場が充実しており状態のよいものを安価に手に入れることができる資産です。

なぜ中古車が良いかというと、中古資産は先ほど解説した「耐用年数」が有利になるためです。

新車で購入するよりも、中古車で購入した方がその後使用できる年数が短くなるだろうことはイメージできますよね。減価償却費を計算する上でも、その「あとどのくらい使用できるか」という部分を考慮して計算しますので、中古車のほうが短い期間で減価償却をする=早期に大きな金額を経費にできるということになります。

車を利用した節税については別記事でも解説しておりますので、以下も確認してみてください。

中小企業は30万円未満であれば一括損金の特例が利用できる

ここまで減価償却の基礎的な内容をお伝えしてきましたが、最後に全てを覆す中小企業だけが利用できる青色申告の特例について説明しておきます。

今まで「10万円以上は資産計上して減価償却、10万円未満は一括損金」と説明してきましたが、青色申告の承認を受けている中小企業(個人事業主もOK)は30万円未満の資産であれば、年間合計300万円まで減価償却の対象とせずに、支出した年度で一括損金にすることができます。

つまりこの特例を利用すれば、30万円未満の資産であれば事業年度末で購入しても合計300万円までは一括で費用にすることができるということです。

今までの話はなんだったのかということになりますが、ただ30万円未満の資産は限られてますし、大きな買い物をしようと思ったら基本的には減価償却のルールに従って費用貸していくことになります。

またこれは租税特別措置法という法律で定められた時限立法であるため、今後の改正でなくなる可能性がある特例です。ただしもう10年以上も改正されていないため、今後も継続して適用できるものと思われますが、念のため当期でも利用することができるのかは税理士さんに確認しておきましょう。

減価償却費の基礎知識まとめ

減価償却費の基礎知識まとめ
  1. 10万円以上の資産の購入は一括で費用にならず資産計上
  2. 資産計上された減価償却資産は、耐用年数に従って複数年で費用化
  3. 減価償却費の計算方法は大きく分けて2種類「定額法」と「定率法」
  4. 減価償却費は月数按分するため、事業年度の初めの方に購入した方が金額が大きい
  5. 中古資産は耐用年数が短くできるため有利
  6. 中小企業(個人事業主)は30万円未満の資産は一括損金にできる特例があるので、事業年度末は金額を意識して購入する

減価償却費は節税対策を考える上で基礎中の基礎です。

経費のきほんである「モノを購入する」

今回ご紹介した方法以外でも、法人を利用してできるだけ生活コストを抑える方法も別の記事で解説していますので、ぜひ他の記事も読んで参考にしてみてください。

実行する前には必ず税理士に確認!

この記事は10年間100社の中小企業を見てきた税理士が、税務的な視点から実際の税務調査の経験も踏まえて執筆していますが、施策を実行する際には必ず顧問税理士に確認するようにしましょう。

記事で記載している内容は税務上の一般的な取り扱いですが、実際にあなたの会社を見てお伝えしているわけではないので、会社によっては適用されないもの、適用してしまうとリスクがあるものも存在します。あなたの会社のことを一番よくわかっているのは顧問税理士ですので、記事で学んだ知識を基に税理士に相談するのが最も間違いがない方法です。

税理士によっては節税対策に積極的ではないこともありますが、税理士は会社のお金に関する一番の相談相手であるべきなので、もし相談に乗ってもらえないような場合は税理士を変更することも検討してもいいかもしれません。

また顧問税理士がいない場合などはこの記事をきっかけに税理士を探してみてはいかがでしょうか。節税のことだけではなく、融資や補助金などの資金政策や、人材雇用や事業計画など、会社のあらゆるお金に関する悩みを相談できるのが税理士です。

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