【税理士が解説】自宅兼オフィスと社宅はどっちが有利?それぞれのメリット・デメリットを税務調査を踏まえて比較

法人の節税

今回は多くの人が疑問に思っている、「自宅兼オフィスと社宅の違い」についてです。

自宅の家賃を経費にしたい!

個人事業主や中小企業の経営者が節税を考えるときにまず考えることだと思います。家計に占める家賃の割合ってかなり大きいので、これが経費にできるのであればかなり助かりますよね。

ただ自宅兼オフィスと社宅って何が違うのでしょうか?

よく行われているのは、個人事業主の方で自宅家賃の何%と事業用として申告をしている方法です。

ただこの割合で経費にする方法、間違ったやり方をすると税務調査で否認される可能性があることをご存知ですか?

この記事では自宅家賃を経費にする二つの方法、「自宅兼オフィス」と「社宅」について実際の節税メリットやデメリット、税務調査における注意点などを解説します。

自宅兼オフィスと社宅の違い

自宅兼オフィスと社宅の違いってわかりますか

個人事業主の場合は「社宅」という方法は利用できず、必然的に自宅兼オフィスとして経費にする方法になるかと思いますので、今回は法人という前提で話を進めていきます。

同じ「経費にする」という目的でも、自宅兼オフィスと社宅ではその考え方も方法も全然違います。

まずはこれらの違いについてご説明します。

自宅兼オフィスは事業供用割合で決まる

自宅兼オフィスとは、その名のとおり居住用の自宅でもありオフィスでもある物件です。一般的にはSOHOなどと言われているのがそれにあたります。

自宅兼オフィスを経費にするためには、事業供用割合というものを計算する必要があります。

これは、「自宅のうちどのくらいを事業の用に供しているか」という割合ですね。個人事業主の方はこの割合に従って、支払っている家賃の30%とか50%を経費として申告をしているかと思います。

家賃のうち、実際に事業で使っている分だけは経費にしてもいいですよ、というのが自宅兼オフィスです。

社宅は居住用を前提としているので事業は関係ない

一方で社宅というのは全く考え方が違います。

社宅とは、会社が役員・従業員のために自宅物件を借り上げて、安く従業員に貸与する方法で、福利厚生的な意味合いがあります。

貸している社宅はあくまで「居住用」ですので、事業供用割合などは関係なく、100%住居で問題ないことになります。

社宅については以下の記事で詳しく解説していますので、具体的な社宅化の手順などは以下の記事をご確認ください。

自宅兼オフィスのメリットとデメリット

契約変更せずにそのまま利用できる

自宅兼オフィスの場合、自宅の一部を事業用に使う=法人に貸し付けるという考え方になるので、今の自宅の賃貸借契約はそのままでも利用することができます。自分と法人との間で自宅のうちこの部分を会社にいくらで貸し付けるという賃貸借契約を結ぶことになります。

事業供用割合を決める必要がある

冒頭でご説明した通り、自宅兼オフィスの場合には事業供用割合というものを定める必要があります。

この事業供用割合というのは何%でもいいというわけではなく、実際に事業で使用している割合を説明可能な合理的な割合で示す必要があるということです。

具体的には面積などで按分する形が最も合理的だと思われます。

自宅のうち、この部屋は完全にオフィスとして使用するので、全体面積のうちその部屋の面積分を事業供用しているものとして経費にするという形です。

以前税務調査で指摘された事例として、自宅部分と事業部分が厳密に区分されていなかったため全額が否認されたという事例もありますので、このあたりをしっかりと区別する必要があるというのが自宅兼オフィスのデメリットになるかもしれません。

光熱費なども一部経費にすることが可能

自宅兼オフィスの場合は、一部の面積を事業用としているので、事業で発生した光熱費(主に電気代)や通信費(インターネット利用料や電話代)も事業に使用している部分は経費にすることができます

こちらも事業として使用している分のみということになりますが、

家賃の事業供用割合と同様の割合を使っているケースが多いようです。

事業所扱いとなるため、税金が多くかかる可能性がある

会社の本店オフィスが別にあり、さらに自宅兼オフィスとして事業を行う場合、2カ所に事業所が存在することになります。

法人には、会社が所在しているだけでかかる税金(均等割)がありますので、オフィスが2カ所になることで税金が多く課されることになってしまう場合があります。

具体的には、同一市区町村内に本店と自宅兼オフィスがある場合には影響ありませんが、別の地域に所在している場合には、その両方で課税されます。(県民税20,000円、市町村民税50,000円)

社宅のメリットとデメリット

事業に関係なく、最低でも50%は経費にできる

社宅の場合、自宅であることを前提としていますので、自宅の面積のうち事業で使用している割合は~などと考える必要はありません。

社宅家賃をどの程度の割合で経費にすることができるかは、社宅を利用した節税の記事で詳しく記載していますが、最低でも50%は経費にすることが可能です。

経費にできる金額は社宅の方が大きくなる場合が多く、法人で節税を考える場合には自宅兼オフィスよりも社宅を選択した方が有利となります。

光熱費などは基本的には経費NG

社宅はあくまで自宅ですので、社宅に係る水道光熱費、通信費などは基本的には居住用として個人利用の金額となるはずです。自宅兼オフィスのように、事業用に貸しているわけではないので、基本的には経費にすることができません。

ただし、実際に事業で使用した実費分を明確に区別できるのであれば、その分は経費にしても差し支えないと考えられます。

大家さんとの契約を法人契約とする必要がある

会社が住居を借りて、その住居を役員・従業員に貸し付けるというものですので、基本的に大家さんとの契約は法人が行う必要があります。

現在居住している住居は当然個人で契約していると思いますので、まずは大家さんか管理会社に連絡して、法人契約に変更することができるか確認しましょう。

だいたいの場合はOKしてくれるはずですが、新規契約扱いとして礼金や事務手数料を徴収される可能性はあります。

まとめ

この記事のまとめです。

自宅兼オフィスと社宅はどっちが有利?のまとめ
  • 自宅兼オフィスは契約変更が必要ないので手間が小さい
  • 自宅兼オフィスは水道光熱費なども事業供用割合に応じて経費にすることができる
  • 社宅の方が経費にできる割合が大きくなる可能性が高い
  • 社宅は契約変更などの事務手数がかかる

まずは社宅化が可能かを検討しましょう

基本的には社宅の方が経費にできる割合が大きく、しっかりとした手順で進めていれば税務調査で指摘を受けるリスクも小さいと考えられますので、まず社宅化が可能かどうかを検討してみましょう。

具体的な手順は別記事で解説していますので、そちらを参考にやってみてください。

個人事業の場合は自宅兼オフィスという選択肢しかありませんので、税務調査で指摘を受けないようにしっかりと事業供用割合を説明できるように準備を整えておきましょう。

実行する前には必ず税理士に確認!

この記事は10年間100社の中小企業を見てきた税理士が、税務的な視点から実際の税務調査の経験も踏まえて執筆していますが、施策を実行する際には必ず顧問税理士に確認するようにしましょう。

記事で記載している内容は税務上の一般的な取り扱いですが、実際にあなたの会社を見てお伝えしているわけではないので、会社によっては適用されないもの、適用してしまうとリスクがあるものも存在します。あなたの会社のことを一番よくわかっているのは顧問税理士ですので、記事で学んだ知識を基に税理士に相談するのが最も間違いがない方法です。

税理士によっては節税対策に積極的ではないこともありますが、税理士は会社のお金に関する一番の相談相手であるべきなので、もし相談に乗ってもらえないような場合は税理士を変更することも検討してもいいかもしれません。

また顧問税理士がいない場合などはこの記事をきっかけに税理士を探してみてはいかがでしょうか。節税のことだけではなく、融資や補助金などの資金政策や、人材雇用や事業計画など、会社のあらゆるお金に関する悩みを相談できるのが税理士です。

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